新しいお薬
まだ日本では発売されてはいませんが、糖尿病に新たな作用をもった薬が注目を集めています。
1つはGLP-1(ジーエルピー・ワン)受容体作動薬、もう1つはDPP-4(ディピーピー・フォー)阻害薬と言われるものです。
実はどちらの薬も理屈は同じです。
人が食事をした場合には血糖値が上昇し、その血糖値の上昇に伴ってインスリンが分泌され、ブドウ糖が代謝されることとなります。
では、ブドウ糖を口から食べる場合と、点滴などによって直接血液中に放出する場合のどちらの方が多くンスリン分泌されると思いますか?
実は、口から食べた方が多くインスリンが分泌されるのです。
何故?
今回話題にする薬は、この何故?から来ているのです。
同じ量のブドウ糖が体内に取り込まれるのならば、同じ量でも不思議はありません。
でも口からの方が多くなる。それは何故か?
口から入った食事は、消化管を通り小腸で吸収され、肝臓から血液中へと放出されますが、タンパク質や炭水化物が腸へ到達するとGLPー1と呼ばれるホルモンが分泌されます。
この分泌されたホルモンが血液中を通り、膵臓のランゲルハンス島へ到着すると、β細胞からインスリンが分泌されます。
言い換えれば、「今から食事が糖分として吸収されるよ!」という伝令が腸管から膵臓へ走るのです。
これによってインスリンが分泌されてブドウ糖を受け入れる準備を整えるのです。
その後、ブドウ糖が血液中に放出され膵臓に到着すると、膵臓は更にインスリンを分泌させます。
膵臓はこのようにして負担を分散して一気に上昇する血糖値に対応できる仕組みを備えているのです。
例にあったように、静脈から点滴を行った場合はブドウ糖は腸を通ることはありません。腸から届く信号で行われる第1段階の分泌は起こらず、ブドウ糖が膵臓に到着して初めてインスリンが分泌されることになります。
この様な違いによって、普通に食事を行ったときの方がインスリンが分泌される量は多くなるのです。
これが、GLP−1と呼ばれる薬(ホルモン)の作用なのですが、このGLP−1がいつまでも効き続けると大変なことになります。
ブドウ糖とGLP−1が揃って膵臓を刺激し続けることになるからです。
折角効率よく分散してインスリンを作る仕組みの筈なのに・・・
効率が良いどころか、膵臓は馬車馬のように働かなければなりません。
そこで出てくるのがDPP−4と呼ばれる酵素です。この酵素はGLP−1を分解する酵素で、GLP−1を即座に分解し始めます。DPP−4は5分もあれば血液中のGLP−1を半減させてしまうとも言われます。10分もあればGLP−1は血液中からほぼ消失してしまうのです。
そこで、このDPP−4を邪魔してやればGLP−1は長持ちするのでは?
という考え方によって開発されたのがDPP−4阻害薬なのです。
DPP−4がGLP−1を分解することを邪魔しますので、より多くのGLP−1が膵臓に届くことになります。
結果として多くのインスリンが分泌されることになります。
これは今までになかった新しい考え方によって開発された薬ですが
残念ながら「糖尿病を治す」薬ではありません。
新型の「インスリン分泌促進剤」なのです。
今までのインスリン分泌促進剤はSU剤が有名なものでした。このSU剤は膵臓のカリウムチャンネルを強引に閉じることでインスリンを分泌させる働きがありました。
今回の薬は強引にGLP−1を膵臓のβ細胞に反応させて、インスリンを分泌させるだけです。
勿論SU剤が効きにくい人には効果があるかもしれませんが、膵臓の機能が疲弊してインスリンが出ない場合には何ら解決にはなりません。当然SU剤同様膵臓の疲弊を招き、二次無効の可能性も考えられます。
ただ、GLP−1には膵臓の細胞を増殖させる機能が有ると言うことが解っていますから、そこらへんのバランスには期待したいところです。



















